更新料と賃料増額の関係 

借主が更新料を払っていれば家賃は上げられないというのは本当か。法的根拠・実務判断・交渉戦略を弁護士が徹底解説 ―

■1. 更新料と賃料は「別の対価」である 

賃貸借契約では、更新時に「更新料」を支払う慣行が広く存在します。特に店舗・事務所では、賃料1〜2か月分の更新料が設定されているケースが多く、オーナーからは次のような相談が寄せられます。

- 更新料を受け取っていても賃料増額を請求してもいいのか 

- 更新料を払っている以上、借主は賃料据え置きを主張できるのか 

民事調停官の経験を有する福岡市内の弁護士が、以下、わかりやすく解説します。

結論として、更新料の有無は賃料増額の可否に影響しません。

最高裁(平成23年7月15日判決)は、更新料を「賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価などの趣旨を含む複合的な性質を有する」と位置づけ、更新料の存在を合理性がないものとは言えないと述べています。

<参照>最高裁(平成23年7月15日判決)裁判所裁判例検索

■ 2. 更新時は賃料改定の「最も合理的なタイミング」 

賃料増額は契約期間中でも請求可能ですが、実務では更新時が最も交渉がまとまりやすいタイミングです。

理由は次のとおりです。

- 借主が契約内容の見直しを受け入れやすい 

- 更新料の支払いと同時に条件変更を検討しやすい 

- 契約書の改定をまとめて行える 

- 更新拒絶(正当事由)との関係で、借主も交渉に応じやすい 

特に店舗テナントでは、更新時に適正化を図ることは資産保全の観点からも合理的です。

■ 3. 更新料を理由に「賃料増額を拒否」できるのか 

借主からはしばしば、 

「更新料を払っているのだから、家賃は上げないでほしい」 

という主張が出されます。

しかし、これは法的には根拠がありません。

賃料増減請求権(借地借家法32条)は、 

- 地価・相場の変動 

- 税負担の増減 

- 建物維持費の増加 

などにより、賃料が不相当となった場合に行使できる権利です。

更新料の支払いはこれらの事情とは無関係であり、 

更新料を払っていることを理由に賃料増額を拒否することはできません。

■ 4. 更新料がある場合の「増額幅」の考え方 

一方、実務では、更新料の有無が「増額幅の調整要素」として扱われることがあります。

参考例:相場20万円、現行12万円、更新料1か月分 

相場乖離が大きいため増額は正当化されますが、借主の負担感を考慮して、 

12万 → 16万 → 18万 → 20万 

といった段階的増額で合意するケースが多く見られます。

つまり、更新料は「増額幅の調整要素」にはなるが、「増額を否定する理由」にはならないというのが実務の運用です。

■ 5. 更新料を「廃止」して賃料に一本化する選択肢 

近年、店舗テナントでは、 

- 更新料を廃止し、 

- 賃料に一本化する 

という運用を選ぶオーナーも増えています。

理由は次のとおりです。

- 更新料は借主の負担感が強く、交渉がこじれやすい 

- 賃料に一本化した方が収益が安定する 

- 更新料の金額が高いと、賃料増額に強い抵抗が出る 

- 更新料の法的性質が争点化しやすい 

更新料を廃止する代わりに、賃料を相場に合わせて適正化する  という方法は、実務上も合理的な選択肢と言えるでしょう。

■ 6. 更新時に賃料増額を行う際の実務ポイント 

更新時に賃料増額を行う場合、オーナーが押さえるべきポイントは次のとおりです。

- 相場資料を必ず準備する(レインズ、募集賃料、商業地価など) 

- 更新料と賃料の関係を整理して説明する 

- 段階的増額案を用意する 

- 更新時期の2〜3か月前に通知する 

■7. まとめ:更新料があっても賃料増額は可能 

本コラムの要点は次のとおりです。

- 更新料があっても賃料増額請求は可能 

- 更新時は賃料改定の合理的なタイミング 

- 更新料は「増額幅の調整要素」にはなる 

- 更新料を廃止して賃料に一本化する選択肢もある 

- 相場資料と段階的増額案が交渉成功の鍵 

賃料が長期間据え置かれている場合、更新時は適正化の絶好の機会です。 

更新料の有無にかかわらず、相場に基づいた合理的な増額は法的にも実務的にも十分に認められます。

弊所では、民事調停官の経験のある弁護士が賃貸借契約についてのご相談に対応しております。

不動産オーナー様、不動産管理会社様におかれましては、ぜひ一度ご連絡ください。