管理会社は賃料増額はどこまで可能?非弁リスクと実務対応を弁護士が解説

管理会社 賃料増額の検討をイメージした住宅模型と電卓の写真

-管理会社 賃料増額はどこまで対応できるのか

最近、管理会社様から「管理会社として、オーナーに代わって増額請求を行ってよいのか?」という質問が多く寄せられています。

特に、地価上昇が続く福岡市や春日市、那珂川市などでは、管理会社がオーナーから賃料増額の交渉を依頼されるケースが増え、管理会社としては、どこまで対応していいのか判断に迷う場面が増えているようです。

本コラムでは、民事調停官(非常勤裁判官)の経験を有する福岡の弁護士の視点から、

・管理会社が代理で増額請求を行う法的な位置づけ

・弁護士法72条違反のリスク

・管理会社が実務で注意すべきポイント

をわかりやすく解説します。

■管理会社はオーナーの代理として「交渉」はできない

管理会社とオーナーは、当該不動産の管理委託契約を結んでいると思いますが、これは一般的に「委任契約」という種類の契約です。 

多くの管理契約では、借主との日常的なコミュニケーションが管理会社に委託されていると思いますが、そうであれば、賃料の増額についての交渉も管理会社は委託を受けているとして行っていいのでしょうか。

賃料増額請求は、貸主であるオーナーに法的効果を生じさせる「代理行為」に該当します。そして、管理会社がオーナー(貸主)に代わって賃料増額の「交渉」を代理で行うことは、弁護士法第72条が禁じる「非弁行為」に該当する可能性が高いとされています。

■弁護士法72条違反とは

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

引用:弁護士法|e-Gov法令検索

上記の条文のとおり、弁護士法72条で、弁護士以外の者が「報酬を得る目的で」「法律事務」等を取り扱うことは禁止されています。これを非弁行為と言ったりします。また、これに違反した者は、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処せられるとされています(弁護士法77条)。

例えば、借主が拒絶しているにもかかわらず、管理会社がオーナーの代理人として増額の妥当性を主張し、合意を取り付けようとする行為はまさに「法律事務」にあたります。なので、管理会社はこのような行為を行うのは絶対に避けましょう。

逆に言えば、管理会社は法律事務にあたらない「事実行為」を行うことはできます。例えば、オーナーが賃料増額をしたいと言っていると借主に伝達することです。

■管理会社の実務ステップ

具体的に、管理会社ができることを整理してみましょう。

1. オーナーとの正確な情報共有  

- 相場データ 

- 経済事情の変化 

- 過去の賃料改定履歴 

これらを整理し、増額の必要性や許容性を検討します。

これはもちろん管理会社ができることですし、むしろ推奨されることです。

2. 借主への事前説明 

まずは口頭・電話・訪問などで、オーナーが増額を希望していることや、増額が必要な理由を丁寧に説明します。

これについても管理会社が行うことができます。

3. 書面での正式な増額請求 

借地借家法に基づき、書面で通知するのがよいですが、管理会社名義ではなくオーナー名義で送るのがよいでしょう。最も安心なのは、弁護士に依頼して、弁護士名義で通知することです。

4. 交渉・合意形成 

借主が応じない場合、オーナー自身が交渉しないのであれば、必ず弁護士に依頼して交渉してください。管理会社が交渉するのは絶対にやめましょう。

■まとめ:借主から拒否されたら、弁護士にバトンタッチ

管理会社は、委任契約の範囲内であれば、オーナーに代わりに借主に増額についての説明等を行うことができますが、法律事務を行うことはできません。

昨今は、コンプライアンスが声高に叫ばれる時代となりました。管理会社におかれても、借主に対して勢い余って法律事務を行うと、弁護士法違反だ!と借主からカウンターパンチを食らうリスクがあります。

どこまでなら許されるのか、どこからは許されないのか、を常に意識していないと足元をすくわれることになります。

必ず明確に線を引いた上で業務に対応してください。

このように、賃料増額は、管理会社・オーナー・借主の三者の利害に大きく影響する重要な手続となります。

管理会社様にとってリスクを避ける最もいい方法は、弁護士に依頼することです。現在、管理会社様から弁護士へのご相談も増えております。実務で判断に迷われる場面がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。