賃料増額の進め方|口約束で下げた家賃を適正相場に戻すことは可能か?元調停官の弁護士が証拠の集め方と交渉術を徹底解説

「一度口約束で下げた賃料は戻せるのか?」というご相談を、福岡のオーナー様から頻繁にいただきます。本コラムでは、賃料増額請求の専門家である弁護士が、書面がない値下げ合意を覆し、適正な賃料へ増額するための具体的な方法を解説します。
賃料交渉の現場では、「今回は特別に下げておきます」といった“口約束”で賃料を下げてしまうケースが少なくありません。本コラムでは、こうした口約束の値下げでも「賃料増額」が可能か、福岡の弁護士が詳しく解説します。
しかし、時間が経つにつれ、
「相場より明らかに安いままになっている」
「当時の事情が変わったので、元の賃料に戻したい」
と考えるオーナーは多く、実務でも頻繁に相談されるテーマです。
このコラムでは、民事調停官(非常勤裁判官)として多くの賃料紛争を調停してきた経験を有する福岡の弁護士が、
・口約束で下げた賃料は、法的にどこまで“戻せる”のか、
わかりやすく解説します。
■口約束の合意でも「正式な賃料」として扱われる理由
結論として、口約束であっても、当事者が合意した賃料は正式な賃料として扱われます。そのため、オーナー側の判断だけで「来月から元の金額に戻します」と通知することはできません。
ただし、これは「絶対に戻せない」という意味ではありません。
なぜなら、賃料増額が認められるかどうかは、次の2点が大きな判断材料になるためです。
- 直近の合意時点から状況がどれだけ変わったか
- 現在の賃料が相場とどれほど乖離しているか
裁判例でも、この2点は一貫して重視されています。
■賃料増額が認められやすいケース:相場との乖離や事情変更
賃料増額が認められる典型的なケースには、次のようなものがあります。
- 周辺相場より明らかに低い賃料になっている
- 一時的な事情(コロナ禍・工事・売上低迷など)がすでに解消している
- 固定資産税や管理コストが上昇している
- 長期間、賃料改定が行われていない
特に、「一時的な事情が解消した」という点は、増額の根拠として非常に有効です。
たとえば、コロナ禍で売上が落ち込んだテナントに対し、期間限定で賃料を下げたケースでは、売上が回復した後に増額が認められた裁判例もあります。
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相場との乖離を判断するには、周辺の賃料相場や過去の改定履歴を確認することが重要です。詳しい調べ方や判断基準については、コラム「【保存版】賃料増額で最初にすべきこと|元調停官が教える成功率を上げる一手」をご参考ください。
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■書面なしの口約束でも「賃料増額の証拠」として有効な資料
「書面がないから不利では?」と不安に感じる方も多いですが、実務では次のような資料が証拠として扱われます。
- 当時のメモや日記
- 銀行振込の金額の変化
- 管理会社とのやり取り記録
- 交渉時のメール・LINE・SMS
- 周辺相場のデータ
特に、銀行の通帳を確認することで、いつ賃料を変更したのか、いくらからいくらに変更したのかは把握できると思います。そうすれば、そのタイミングの時に何があったのかを証明することで、間接的にどのような理由で値下げがされたかを証明することができるわけです。
■実際に増額を進める際の注意点
賃料を戻したい場合でも、次の点には注意が必要です。
- いきなり元の金額に戻す通知は避ける
まず、いきなり元の金額に戻す通知を行うと、通常は、テナント側もその突然の通知に驚き、不快な印象をもってしまい、まとまる協議もまとまらないということがあります。3ヶ月後から元の金額に戻したい等、ある程度の猶予期間はもっておくのがいいと思います。
- 客観的な理由を丁寧に説明する
次に、 相場データや事情変更を示す資料があると、テナント側も納得しやすくなります。
- 段階的な増額案を提示する
さらに、 一度に戻すのではなく、数回に分けて調整する方法も有効です。
- 書面での通知は必須
最後に、後のトラブル防止のため、必ず文書で残すべきです。
■「戻せる可能性」はあるが、根拠づくりがすべて
口約束で下げた賃料は、形式上は正式な合意として扱われます。
しかし、相場との乖離や事情変更があれば、増額が認められる余地は十分にあります。
重要なのは、
「なぜ今、賃料を戻す必要があるのか」
を客観的に説明できる資料をそろえることです。
賃料改定は専門的な判断が必要になる場面も多いため、早い段階で専門家に相談することで、無用なトラブルを避けながら適正な賃料へ近づけることができます。
弊所では、賃料改定のトラブルを多く解決しています。ぜひ一度ご連絡ください。


