更新時なら必ず賃料増額できる?弁護士が教える適正賃料の基準と借地借家法に基づく交渉の進め方【元民事調停官が実務を解説】

賃貸借契約の更新が近づくと、「このタイミングなら賃料を上げられるのではないか」と考えるオーナー様は多くいらっしゃいます。

実際、更新時は契約内容を見直す機会として最も自然なタイミングです。しかしながら、更新時期だからといって当然に賃料増額ができるという法律上の根拠はありません。

本コラムでは、民事調停官(非常勤裁判官)の経験を有する福岡の弁護士が、

・更新時の賃料増額はどのように判断されるのか

・どのような準備が必要なのかを

法律と実務の両面からわかりやすく解説します。

■更新時は「理由」ではなく「きっかけ」

まず押さえておきたいのは、賃料増額の可否は“更新の有無”ではなく、“最終合意時点からの事情変化”で判断されるという点です。

具体的には、借地借家法32条(参照:e-Gov法令検索)において、

- 周辺相場の変動 

- 地価や経済事情の変化 

- 固定資産税などの経費増減 

- 建物・設備の状況 

などを総合的に考慮して賃料の増減を判断すると定めています。

つまり、更新時の賃料増額であっても、これらの客観的な根拠がなければ認められることはありません。

逆に言えば、十分な根拠があれば、更新時でなくても増額が認められるということでもあります。

結論として、更新時はあくまで「交渉のきっかけを作りやすい時期」であり、“更新だから上げられる”という誤解は避ける必要があります。

■実務で特に重要な「最終合意時点」という視点

賃料増額の判断で見落とされがちなのが、“最終合意時点”という考え方です。

たとえば、 

- 10年前に賃料を決めて以来、一度も見直していない 

- 当時は周辺相場が低かった 

- その後、エリアの需要が大きく変化した 

こうしたケースでは、相場との乖離が大きくなっている可能性があります。

この「最終合意時点からの変化」が大きいほど、増額の根拠は強くなります。

その点で、更新時はオーナー・テナント双方が契約内容を見直すタイミングであるため、 

「最終合意時点からの変化」を丁寧に説明することで、合理的な交渉がしやすくなるというメリットがあります。

■賃料増額が認められるかどうかの判断基準

賃料増額の可否を判断する際には、主に次のような要素を総合的に検討します。

1. 周辺相場の変動 

もっとも重要な要素の一つです。 

近隣の類似物件の賃料が上昇している場合、増額の根拠となり得ます。

特に、 

- 商業エリアの再開発 

- 人口増加や需要の高まり 

- 競合物件の賃料改定 

などが起きている地域では、相場が大きく動いている可能性があります。

2. 経費の増減

固定資産税や維持管理費が増加している場合、賃料見直しの理由となります。 ただし、経費増加だけで大幅な増額が認められるわけではなく、他の事情と合わせて総合的に判断されます。

3. 建物・設備の状況 

設備投資を行い、物件価値が向上している場合は、増額の根拠となることがあります。

4. 最終合意時点からの経過年数 

長期間賃料を据え置いている場合、相場との乖離が生じているケースが多く、見直しの余地が大きい傾向にあります。

■オーナーが抱えやすい不安と、その解消ポイント

賃料増額を検討する際、多くのオーナー様が次のような不安を抱えています。

- 「関係が悪くなるのでは?」 

- 「断られたらどうしよう」 

- 「交渉がこじれて長期化しないか」 

これらは自然な不安ですが、根拠を丁寧に示し、合理的に説明することで、実はほとんどのケースで冷静な協議が行われます

特に、 

- 相場データ 

- 経費の増減 

- 最終合意時点からの変化 

を客観的に示すことで、テナント側も納得しやすくなります。

■更新時に交渉がしやすい理由

更新時は、テナント側も契約内容を見直すタイミングであるため、 

- 契約書の再確認 

- 条件変更の相談 

- 将来の利用計画の検討 

などが自然に行われます。

そのため、オーナー側から賃料見直しの話を切り出しても唐突感が少なく、交渉の土台を作りやすいというメリットがあります。もう少しで更新時期が来るような賃貸借契約がある場合は、今のうちに賃料見直しを検討してみるのがいいかもしれませんね。

■実務で重要になる「相場調査」と「契約書確認」

賃料増額を検討する際、最初に行うべきは次の2つです。

1. 最新の市場賃料の調査 

周辺の類似物件の賃料を把握することで、 

- 現在の賃料が適正か 

- どの程度の増額が妥当か 

を判断できます。

複数のデータを組み合わせることで、より客観的な根拠を作ることができます。

2. 契約書の確認 

特に重要なのは、 

- 最終合意時点の賃料 

- 更新方法(自動更新か、合意更新か) 

- 特約の有無 

です。

契約内容によっては、更新時の手続きや交渉の進め方が変わるため、事前の確認が欠かせません。

■賃料増額交渉の進め方

実務では、次のような流れで進めることが一般的です。

- 相場調査・契約内容の確認 

- 増額の根拠を整理 

- テナントへの説明・協議 

- 合意書(覚書)の作成 

- 更新契約の締結 

特に、根拠を丁寧に説明することが、円滑な合意形成につながります。

■まとめ:更新時は「動くべき時期」だが「根拠がすべて」

更新時は、賃料見直しのきっかけとして最適なタイミングです。 

しかし、増額が認められるかどうかは、 

- 周辺相場 

- 経費の増減 

- 建物の状況 

- 最終合意時点からの変化 

といった客観的な事情に基づいて判断されます。

適切な準備を行えば、更新時は賃料の適正化を進める大きなチャンスとなります。 

まずは、相場調査と契約内容の確認から始めることが、成功への第一歩です。

弊所では、契約書の確認からご相談を承っていますので、是非一度お問い合わせください。

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