賃料(家賃)を上げたいが借主が拒否した場合どうなる?〜不動産オーナーが知るべき正しい対応〜

家賃を上げたいと考えて借主に通知したものの、借主から「応じられません」と拒否される。
不動産オーナーであれば、一度は直面する場面です。しかし実は、ここで多くのオーナーが“誤った対応”をしてしまい、結果的に増額の機会を逃しています。
このコラムでは、民事調停官の経験を有する弁護士の視点から、
・借主から値上げを拒否された場合どうすればいいか
・借主が値上げの通知を無視してきた場合どうすればいいか
を解説します。
■ 借主が拒否しても「増額の余地」は残っている
結論から言うと
『借主が拒否したからといって、家賃増額の可能性が消えるわけではありません。』
むしろ、ここがスタートと言えます。
家賃は契約内容の一部ですが、法律は「経済事情の変化」に応じて見直しを認めています。
例えば次のような事情がある場合、増額が認められやすくなります。
- 周辺相場が上昇している
- 固定資産税や管理コストが増えている
- 建物の価値維持のための修繕を行った
- 長期間家賃を据え置いている
- 契約当初と経済状況が大きく変わっている
貸主が増額を一方的に決められるわけではないですが、一方で、借主の「嫌です」という一言で終わる話でもありません。
重要なのは、「増額の根拠をどれだけ客観的に示せるか」です。
■ 借主が拒否した後にオーナーが取るべき3つのステップ
1. 増額の根拠を整理する
まずは「なぜ今、いくら上げたいのか」を数字で説明できるようにします。
周辺相場、固定資産税、修繕費の増加など、客観的なデータがあるほど交渉は有利になります。
2. 書面で正式に増額請求を行う
口頭だけでは実際のところ、記録に残らないので、話がもめたときに不利になります。
後々の交渉や裁判のことを考えると、記録に残る書面で通知しておくのがよいと思います。一番おすすめなのは内容証明郵便で通知をすることですが、相手方との関係性によっては、内容証明郵便でない方がいいケースもあります。これは、交渉の“土台”を整える意味でも重要な判断となります。
3. 調停・裁判という選択肢も視野に入れる
これに対して、借主の態度としては、大きく3つに分かれます。
1 応じる
2 拒否する
3 無視する
です。
この時、借主が拒否や無視し続ける場合、調停や裁判で増額の妥当性を判断してもらうことができます。
法律上、裁判をする前に調停をしなければいけません。
調停はとても柔軟な手続で、双方の事情を踏まえた現実的な解決が期待できます。
■ 借主が拒否したまま放置すると起きる“見えない損失”
借主に拒否や無視された場合、そのまま放置してしまうオーナーは少なくありません。また頃合いを見て請求しようとか、来年の更新の時期に請求しようと思ったりします。
しかし、放置すればするほど、オーナー側に不利益が積み重なります。
- 周辺相場が上がっても家賃だけ変わらない
- 修繕費や税金が増えても収支が改善しない、むしろ減益となる。
- 借主が「拒否すれば通る」と誤解し、今後の交渉が難しくなる
特に長期契約では、月4万円の差でも10年で480万円の損失になります。
家賃交渉は“時間との勝負”でもあるのです。
■ 借主が拒否する理由の多くは「感情」にある
借主が拒否する理由は、必ずしも経済的な事情だけではありません。
- 突然の通知で納得できない
- 説明が不十分
- 値上げの理由が理解できない
- 他の物件と比べて高い気がする
つまり、説明不足やコミュニケーションの問題で拒否されているケースが多いのです。
ここを丁寧に解消するだけで、増額に応じてもらえることも珍しくありません。
■ 調停官の視点:増額が認められやすいケース
調停や裁判では、次のような事情があると増額が認められやすくなります。
- 周辺相場より明らかに低い
- 固定資産税や管理コストが大幅に増えている
- 建物の価値維持のための修繕を行っている
- 長期間家賃を据え置いている
- 経済状況が大きく変わっている
逆に、根拠が弱い場合は増額が認められにくいため、事前準備が極めて重要です。
■ まとめ:拒否された後こそ、オーナーの腕の見せどころ
借主が拒否した瞬間は、オーナーにとってストレスの大きい場面です。しかし、以下のように正しい手順を踏めば、増額が実現する可能性は十分にあります。
- 根拠を整理する
- 書面で正式に請求する
- 必要に応じて調停・裁判を検討する
このような手順を踏むことで、借主との感情的な対立を避けつつ、合理的な増額交渉を進めることができます。
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